『シェイプ・オブ・ウォーター』で第90回アカデミー賞作品賞他4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督が、過去にアメリカの映画雑誌のインタビューでお気に入りのホラー映画を紹介していたので簡単にまとめました!!
一体どんな作品が選ばれているのでしょうか?
『呪いの家(1994)』
まず紹介するのは、ルイス・アレン監督の『呪いの家(1994)』です。ジャンルはホラー・ラブストーリーで、幽霊屋敷に引っ越した兄弟が怪奇現象に見舞われるも、ある女性の登場により事態は急転していく…といった内容。
ギレルモ・デル・トロ監督いわく「私たちの中にあるような“ゴースト=邪悪な存在”というイメージでゴーストを描くのではなく、とても魅力的な存在として描いている部分がお気に入り」なのだそう。
『ヘルボーイ(2004)』を始めとした彼の作品でも、見た目は恐ろしくてもどこか愛嬌を感じてしまうような人間臭いキャラがたくさん出てきますよね。
ギレルモ・デル・トロが愛してやまないウルトラシリーズにも、どこか憎めない愛嬌たっぷりの怪獣が大勢登場しています。(カネゴン、ピグモン、個人的にはレッドキングは萌えキャラだと…etc.)
本作や特撮作品を通し、異形の存在たちをただ単に“恐ろしいもの”として描くよりも、どこか人間臭さや愛嬌が感じられるように造形していくことで、クリーチャーたちを魅力的に表現する術を学んだのかもしれません。
『藪の中の黒猫(1986)』
来ました!邦画です!!監督は日本における自主制作映画のパイオニア、新藤兼人です。本作は化け猫たちが侍を翻弄するホラー作品。
ギレルモ・デル・トロ少年は、美女に化け、男たちを妖しく惑わす化け猫に興奮を覚えたそうです(笑)。
確かにミステリアスな雰囲気を醸し出している女性って魅力的ですよね…。
『鬼婆(1964)』
またしても新藤監督の作品です。本作をカルト映画の傑作として挙げる映画人は結構多いですね。南北朝時代を舞台に、追剥でなんとか生計を立てている女性二人が、嫉妬、生への執着に駆られ、まるで“鬼”のように変貌していく様を描いています。
ギレルモ・デル・トロ監督は本作から「東アジア独特の幽霊や超常現象に対する考え方」の面白さを感じたそうです。
言われて見れば、日本の幽霊や鬼は、普通の人間が強い怨念に駆られて化け物に変貌してしまうパターンが多いですよね。
彼にとって東洋的なオカルティズムが新鮮で興味深く感じられたのでしょうね。
『たたり(1963)』
監督はあの『市民ケーン』の編集に携わったロバート・ワイズ。
ギレルモ・デル・トロは本作の秀逸なテクニックに感服したそうです。いわく、「モノクロの時代に、音響、カメラワーク、白黒のコントラストを駆使し、悪意を持った見えない存在を見事に表現できている」んだそう。
『回転(1961)』
原作は、心理小説の名作「ネジの回転」。
本作の監督ジャック・クレイトンをギレルモ・デル・トロは「合理的な視点と超自然的な視点の両方から本作を表現できている」と評しています。
『チェンジリング(1980)』
ピーター・メダック監督作品。
派手な演出(スプラッター的な演出)がホラー映画の主流となっていた時代には珍しく、音響等を駆使したしっとりとした恐怖を与えてくれる作品です。
ギレルモ・デル・トロは本作をとても美しい作品だと評しています。また、「悲劇的な展開と美しさが融合したときに、超自然的な何かを感じられる仕組みになっている」とも語っていました。
本作に登場する怨霊は思わず同情してしまいそうな悲痛な存在です。ギレルモ・デル・トロは幽霊や怪物に思わず愛情を向けちゃうような作品がお好みのようですね。その傾向は彼の作品からもひしひしと伝わってきます。
総括!
ギレルモ・デル・トロは日本の漫画や特撮に詳しいだけあって、ピックアップされていた作品に日本の古い作品が二つもランクインしてましたね。日本人として誇らしいです!
現在、映画界の第一線で活躍するギレルモ・デル・トロ監督。彼の作品をより深く理解するヒントは、意外にも、古き良き名作たちに隠れているのかもしれませんね。